限られた時間で,みんな集中して働く.だから労働時間は短めだし,週末もしっかり休んでるけれど,しっかり結果を出している.その背景には,誰しも休みは必要,休まなかったらパフォーマンスが下がるだけ,っていう極めて理性的なロジックが働いているように思う.日本人は「仕事の合間に研究します」って言う人がいるけど,こっちでそんなことを言うと「そのぶん君の休息が減る,そうするとパフォーマンスが下がる,じゃあそれは誰が穴埋めするんだ?」って怒られる.1人の人間ができる仕事(=能力×労働時間)には上限があるというのは,極めて正しい発想だ.
男女の公平さも凄い.もちろん「男らしさ」「女らしさ」みたいな概念はある(というか,むしろ日本より強い)けれど,それを仕事には持ち込まない“けじめ”がある(というか,法律で保護さられているから,管理職は嫌々ながらも顔に出さない).だから,仕事をしていても出産・育児ができる…というか,安心して出産・育児をするために就職する(ように見える)人も多いらしい.
…などなど,こちらでお世話になっている日本人の先生方から,いろいろ「なるほどな」っていう話を聞けた.話をしながら,私は「時間」と「予算」の意識が不足していると気づかされた(というか,例えば最初の例は,足りなくなった「時間」を補うために,誰かを「予算」で連れてこなきゃいけないという話.ひとりの人間にとってみれば「お金で時間は買えない」けれど,組織としてはお金は時間を充足するためのものと考えられる.その発想はなかった).勉強になった.
ネイチャーによる,リンダウでの『ノーベル賞受賞者会議』関連のポッドキャストを(やっと)見終わった.”Confronting the Universe”と題した今年のシリーズは過激で面白い.
ロバート・ラフリンは第3回では「太陽光発電なんてゴミ!」「科学が出すのは論文だけ,直接解決策をもたらすわけじゃない」などと乱暴なことをぶちかまし,第5回では「インフレーション理論って当たり前になってるけど,じゃあそれ以外の理論を本当に否定できんのか?」と若手研究者にケンカをふっかける.これはワザと悪役を演じてるからいいとして,第4回のマルティナス・ヴェルトマンに至っては「ダークマターなんて,証拠の無い理論は信じない」と終始一貫.
そして対談の相手となる若手研究者も生意気だ.自信たっぷりで(この会議に参加できる段階で相当な選抜を通ってるから納得はできるけど),対談終了後には「じいさまばっかで,全然俺たちの言ってることが分かってない」なんて言い出す始末.
でも,これがサイエンスだなぁと思う.実験的証拠だけをもとに,最適な仮説を採用するというアプローチ.エラい人の言ってることだから信じる!っていうんじゃなく,むしろエラい人でもとんちんかんなことを言っていたら喰ってかかるのが正しいんだろう.
フォローしてきた.詳しくは書けないけれど,差し支えのない範囲で(といっても大体は書ける)
午前中は,ムンスターロードにあるクリニックでの実習.先生は,まず学生に診察のデモをやらせてチェック,そしてYoutube教材でおさらい.最後に,学生が実際に患者さんを診察して(普通の外来診察も兼ねているので,ちゃんと先生も診察する)おしまい.
ちょうど整形外科領域だったうえに,先生も私と同じく椎間板ヘルニアだったりして,その話題で盛り上がった(こんなところでナカーマしても嬉しくないんだけど…).最初,先生が遅刻してきたので不安だったんだけど,現場での体験を踏まえた問題意識とかを語ってくれて,なかなかいい人だったとは思う(というか,教育費として結構な報酬が出ているので,ちゃんと教育して当たり前なんだけど).金儲けに走る医者のこととか,あとは,運動指導・生活指導はちゃんと患者さんを最後までフォローしてあげなきゃいけないんだよ,って話とか.
でも凄かったのは学生だな.ついていった子は凄く聡明で,勤勉.診断手技はほとんど完璧.先輩からも「実力差に愕然とさせられるよ」とは聞いていたけど,確かに「やべぇな…」って思う.
でももっと凄かったのは,もう一人の学生.1時間以上遅刻,明らかに予習していない,寝不足でぼーっとしていて話を聞いていない…挙句の果てに,出席票を診察室のPCで印刷しはじめる始末.しかもデモに行っちゃった2人の分までサインしてもらおうという図々しさ(さすがに先生が拒否した).最後には,先生と政治の議論になって「政治どうこう以前に,まずは学生の本分をしっかりやれ」と嗜められてた.なんていうか,いろいろ凄い.
で,午後は…特に記すこと無し.というか,本当は病棟実習のはずだったんだけど,患者さんはお昼ご飯を食べてるか,昼寝中か,面会中か,離席中かで全然診られなかった.
あと,日本の3年生より臨床的な知識・手技に長じているとはいえ,病棟に野放しにして勝手に診察させる方式ってどうなのかなぁと.確かに学生の自主性は伸びるし,凄くいいトレーニングになるんだけど,いかんせん患者に無理させすぎていると思う.「診がいのある」患者さんのところには,学生がばらばらとやって来ては好き勝手に診察していくことになるわけで…ちょっと見てられなかった部分があるのも正直なところ.少なくとも,私の親が患者だったら,こんな病院には入れたくないなって思うレベルだった.
先輩に使え使えって言われながらも,面倒くさい+金払いたくないという理由で徹底抗戦を続ける日々…だったのだけど,遂に諦めて使い始めたMATLAB.というのも,Excel 2008 for Macが重すぎて使い物にならないがため.1000Hzで数十秒間記録したデータを扱っているんだけど,恐ろしくもっさりしているどころか,なぜか折れ線グラフにしようとすると30分近くかかる…なんだこれ(ちなみに棒グラフだったら数秒で出せる)
価格だけど,実は大学が団体ライセンスを取ってくれていたのでタダだったというオチ.とりあえず使うだけ使い始めてはみたけど,プログラミングもどきなのですげぇ時間がかかってヤバいですどうしましょう状態.まぁ,ひとつプログラムしちゃえば,次に同じ作業をするときに自動化できるので楽なんだろうけど,おそらくトータルで見たらやっぱりエクセルの方が早いです…いまんところ.
今日はMATLABのオンラインセミナー(Webinar “MATLAB Tools for Scientists: Introduction to Data Analysis and Visualization”)を受けた.なるほど,ソースをゼロから手打ちするんじゃなくって,例えばとりあえずグラフを1個つくって,それと同じようなグラフを描くようなソースを自動生成させるわけね.賢いな…とはいえ,どうせ私は汚いコードの中で訳が分からなくなって,やっぱり手打ちすることになるんだと思うけど.
ひとまず,痒いところに手を届かせてくれる『初心者によるMATLABメモ』さんを中心に勉強中.プログラミングに充実感というか快感を覚えてしまうタイプの人間なので,とりあえず手段を目的化しないように注意しよう(と言いつつ既に目的化している…うまくプログラムが走ったら『ハレルヤ』流れるようにして悦んでます)
余談だけど,他にアンチMATLABがいないか調べてみたところ…理解が曖昧なまま進んでしまうとか,プログラミングスキルが身につかないからという,いたって正論な方しかいらっしゃいませんでした.ザ・恥.
あと,それとは別に,その名も“Abandon MATLAB”というブログも…こっちはMATLABのバグや仕様の欠陥に関する立場から.でも,さすがに最新版では改善されているんじゃないかなぁ?少なくとも,私ぐらいのレベルでは関係なさそう.
昨日がラボ初日.論文をほとんど読んでいない後悔もあって,朝ベッドから起き上がれない症候群になりかけたのだけど,まぁがんばって逝ってきた.
さすがに初日ということで,そこはなんとかなりました.指導教官とテーマについて話し合って,何人かメンバーの名前を(必死に)憶えて,あとはペーパーを読んで.帰りはパブでビール飲んで,タイ料理ごちそうになって終了.正直,話してることはさっぱり分かんなかったんだけど,まぁ楽しかったのでよし.
研究室選び(特に学部学生の)で一番大切と言われるのは,実は「雰囲気」だったりするわけですが,なかなかよかったと思う.指導教官は,教授も博士課程の先輩も親切.「日本人だからフォローできてないんじゃないか?」と心配しているらしく,ちょいちょい向こうから「質問は?」と訊いてきてくれる(ホントはこっちから訊かなきゃいけないんだけど).ラボはほとんど会話が無くって,ランチも各自バラバラに食べてるようだけど,それは各自のテーマがバラバラで,結果として進捗もバラバラだからということらしい.さっき言ったように,帰りには他のラボの人とパブに行ったりしてるみたいで,決して悪い雰囲気じゃない(学生のようにベタベタしすぎず,好きな人と好きな談義をするって,まぁ大人な関係っていうのかな…と解釈).
あと,研究内容にも意義を見出せるような予感.舞台女優さんの運動を調べるセクションにいるのだけど,今のところ面白いと感じる(少なくとも,研究室にいるときに以前よりは眠くないです).薬学部でのミクロなアプローチよりも,こうした解剖学的なマクロな考え方のほうが自分に合ってると思う.実験で使うモーションキャプチャもアニメーションにも通じるところがあって面白いし,なによりショービジネスにこういう形で関われるというのも楽しい(前にも書いたかもしれないけど,私はミュージカルとか映画が死ぬほど好きなので).
来週,指導してくれる院生が学会発表でいなくなってしまうこともあって,当面は文献を読むのが中心になりそうだ.部屋でずーっと座ってると眠くなっちゃうので,なるべく図書館で読もうと思ってるのだけど…つーか,とりあえずまだ読み終わってないのを週末に読まなきゃな.
とか言いつつ,今日は自然史博物館などをぶらぶらと.