はじめての旅行医学:ワクチンのすヽめ
今回アフリカに行くにあたって「海外渡航のためのワクチン」(トラベラーズ・ワクチン)について調べてみたので、まとめておく(あくまで2017年7月時点の情報、参考までに。実際に打つときは担当医等とも相談の上、ご自信で責任をもって打ってください)
ワクチン接種ってそもそも必要?
外務省「海外渡航のためのワクチン」に書いてある通り、「予防接種証明書を要求される場合」というのがある。例えば、熱帯の一部の国はイエローカード(黄熱ワクチン接種証明)を持っていないと入国できないし、普通なら何も気にせず入国できる欧米諸国も、例えば就学・就職となるとワクチンなどの証明書が要求される(たぶん日本人だと結核関連が一番面倒なのかな?と思う)。これは証明書を出さないと門前払い、お話にならないわけだから、さすがにみんな打つでしょう。
問題は必須じゃないワクチンをどうするかだけど…やっぱり場所や状況によっては打った方がいいものってあるわけです。日本に住んでいると気にならないけれど、他国、特に発展途上国ではいろんな感染症が流行っている。その中にはワクチンを打っておけば効率的に予防できるものもあるし(上記の黄熱もそう)、さらにはワクチンを打っていないと発症したが最後、助からない病気もある(狂犬病とかね)。もちろん、普通の海外旅行でみんなが動物に噛まれそうな状況に遭遇するとは考えられないし、どんなワクチンも副反応や有害事象はつきまとうので、不必要なワクチンは打たないほうがいい。けれど、繰り返しになるけれど、リスクがあるならやっぱり打った方がいいわけです…リスクがあるなら。
じゃあ何を打てばいいの?
ずばり米国CDCが“Travelers’ Health”として国ごとにまとめているので、これを参考に。外務省でも「世界の医療事情」としてまとめているので、こちらを見てもいいだろう(ざっくりした地域別一覧表が見たければ、上記「海外渡航のためのワクチン」にもある)。
ただし、推奨されているワクチンすべてを接種すると膨大な額がかかるので、現実的には一部を選択して摂取することになるだろう。例えば、A型・B型肝炎,麻疹,髄膜炎菌,黄熱,DPT(ジフテリア・百日咳・破傷風)については、ワクチン接種でほぼ100%の予防効果が期待できるとされているので、費用対効果は高いと言える。罹患したら致死率100%の病気、例えば狂犬病も、動物との直接接触が予想されるなら打たない理由はない。逆に、チフスは7割程度しか予防できないと言われているので、食事に自信がある(腹が強い、という意味ではない。非加熱食品や生水を口にしない自信がある)のであれば打たなくてもいいかもしれない。
大切なことは自分が旅行先で何をするつもりなのか、できるだけ具体的にイメージしておくこと。キャンプ?川遊び??大人の課外活動???それによって、どんな病気にどれだけかかりやすいか、つまりはリスクが決まってくる。例えば狂犬病は、ずーっと車に乗って移動するサファリツアーより、東南アジアの下町歩きの方がリスクは高い(2006年、本邦では36年ぶりとなる狂犬病の症例では、患者さんはフィリピンの知人宅で飼い犬に手を噛まれていた)。一般的に、VFR(visiting friends and relatives)と呼ばれる友人・家族訪問は、通常の旅行より注意が希薄になる一方、実は感染リスクが高いと言われているので注意した方がよさそう。
どこで打てばいいの?
日本旅行医学会が海外旅行前予防接種機関リストとしてまとめているので、こちらを参考に。ここに載っていない病院でも、旅行者向けワクチンをやっている病院はあるので、適宜確認を(ただし、輸入ワクチンは扱っていないところが多いみたい)。普通の病院だと、例えば麻疹とかDPTのような通常のワクチンは接種してもらえるけれど、チフスだの狂犬病だのはまず100%置いていないので注意。
黄熱は例外で、原則として指定された検疫所で指定された日時にしか打ってもらえないので、事前に確認を。
あと注意すべきは、一部のワクチンは追加接種が必要で、接種間に一定の間隔が必要だということ。例えば3回接種をフルにやるつもりなら半年かかることもあるので早めに行動するのが吉。あと、輸入ワクチンについては、万が一有害事象が発生した際に国内の保障制度の対象とならないので、打つならそのへんどうなってるのか確認した方がよいと思われる。
実際のケース:ケニアまちあるき。
具体例として自分の場合、ケニアに行ってみようと思った場合。ケニアについて、CDCが勧めているワクチンは:
- ルーチンのワクチン(MMR,DPT,水痘,ポリオ,インフルエンザ)
- A型肝炎
- チフス
あとは状況に応じて:
- コレラ
- B型肝炎
- 髄膜炎菌
- 狂犬病
- 黄熱
- マラリア(ワクチンではなく予防内服)
このうち、太字のA型肝炎,B型肝炎,破傷風,チフス,髄膜炎菌,黄熱については外務省も接種を勧めている。黄熱は、実際の予防必要性はさておき、出入国のイエローカード確認がまた厳しくなっているし、受けておいた方がいいだろう。あとは、A型・B型肝炎,破傷風、髄膜炎菌、それから他のワクチンの順で、余力に応じて受けて行く感じだろうか。
それを踏まえた上で、じゃあ自分のリスクは?ということになるわけだけど、いろいろあって街歩きをする予定なので、やれるものはとことんやっとくか、的な感じになる。訪問は雨季だから髄膜炎菌もシーズンだし。
ということで、私が最終的に受けることにしたのはA型肝炎,チフス,髄膜炎菌,狂犬病,それから黄熱でした。仕事柄、空気感染の水痘・麻疹・結核,それからムンプス,B型肝炎,破傷風ワクチンは過去に接種していて、インフルエンザも渡航前に職場で接種を受けることになるので省略できるということで…あえて省略したのは、なかなか接種機関が見つからず、しかもかかったところで死にはしないとたかをくくったコレラのみ。
…でも…
- A型肝炎(エイムゲン):10,800円 x 3回
- チフス(Typhim Vi):15,000円
- 髄膜炎菌(メナクトラ):25,000円
- 狂犬病(Rabipur):20,000円 x 3回
- 黄熱(黄熱ワクチン):11,180円(証明書代を含む)
…これでも11万円だぜ…!!
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