Scientific misconducts.
昨年、日本の科学研究で不正件数が少ないのはおかしいという記事が掲載された。井上明久前東北大総長の不正疑惑を中心に、JSTが出資している研究で不正件数がゼロというのはありえないのではないかという記事だった。私も(学内に不正行為で有名になってしまった研究者がいたこともあって)不正ゼロというのはさすがに無いだろうとは思いながらも、同時に、探したところで見つかってせいぜい数件程度だろうと思っていた。「欧米と一緒にするな」というか、この国の科学者の倫理意識は総じて高い水準にあるんだと思っていた。
…甘かったよね。それから一年と経たずに小保方ミサイルが炸裂。さらに悪いことに、その後の理研の後片付けも迷走。井上氏の件もまだ収集がついていないらしい。
単純な剽窃や二重投稿の検出については、ある程度の自動化がなされるだろうと思う。学生レポートではコピペを検出するコピペルナーがあり、5年前に登場してからというもの私の大学の教授も愛用している(らしい。本人が喜々として言っていた)。3年前には、こちらはジャーナリズムにおけるコピペを標的として英国版Churnalismが登場し、昨年には米国版Churnalismが登場した(教えてもらった、米国版についてのthe Atlanticの記事はこちら)。今後、科学論文についてもプレ査読的にこのようなスクリーニングソフトが利用されていくんだろう。
画像についてもSTAP問題以降、編集・加工の形跡を探す試みがますます盛んになった。ついに国内ベンチャーによってLP-examという不正検出ソフトがリリースされ、今後こうしたソフトウェアによるスクリーニングが行われるだろう。
こうした改竄みたいのは自動検出可能なんだけど、しかし、より根深い問題だと思うのは“全てでっち上げ”みたいなものをどうするかということ(例えばES細胞のデータを使ってSTAP細胞のストーリーを創り出す、というような)。こうなってくると巧妙で、シンプルな不正検知での対策は難しいのではないかと思う。過失による不正行為は教育すればどうにかできるけど、悪意があるとなるといかんともしがたいものだし。前にも触れたけど、世の中には相手を邪魔しようと明確な悪意をもって他人の研究を妨害・破壊する輩すらいる。査読つきのNatureですらSTAP論文が載ってしまったというのだから、open journalが流行の御時勢、やってもいない研究結果を報告するような研究者が今後も減るとは考えられない。
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