ぐるぐるぐるぐるグルコサミン♪ は無効なのか

学校でPubMed(医学論文の検索サイト)の使い方を勉強したのだけど,そんときに与えられた課題が「グルコサミンは関節炎に有効か」とか「風邪にはビタミンCか」とか,そんなんばっかだった.たぶん「エビデンス(医学的根拠)あるんか?wwwないやろwwwどやwww」って盛り上げたかったんじゃないかと思うんだけど…しかし,ドラッグストアでバイトしている身としては「ちょwww待てwwwww」と言いたくなる.

健康食品がインチキくせーってのは分かる.例えばグルコサミンとかコンドロイチン,「健やかな毎日にゼヒ!」とか曖昧な広告をしてる時点で胡散臭い(←「関節痛に効く」って言うと薬事法違反になるので).実際,コンドロイチンに関する国民生活センターの報告によれば,含有量は少ないわ原材料テキトーだわで,エラいことになってる製品も少なくないという.

ここで私が訊きたいのは,「じゃあ医薬品はどうなの?」っていうことなのさ.例えばコンドロイチンは,医療用の医薬品になってるのもあるわけデスヨ.医薬品は含有量とか吸収性とか,一定の基準を通ってるわけだけど,それでも効かないとすると…第三類医薬品をドヤ顔で売ってる私たちがアフォだってことになるどころか,医療用医薬品の注射剤とか使ってる医者も,それを認可した行政もクソの山だってことになるが大丈夫か?

(注:以下,あくまで個人の感想であることをご了承の上,お読みください.
 ご自身の健康問題に関しては,ためしてガッテンやDHCで何とかしてください.)

再び,コンドロイチンについて考えてみよう.Wikipediaには,コンドロイチンについて「経口で摂取した場合は、関節疾患改善作用は無いものと医学的には考えられている。これは関節軟骨には血管が存在せず、消化管から吸収された成分が関節内に移行することが原理的に不可能なため」と書いてある.一見ロジカルだけど,冷静に考えれば,これはおかしな話だ.血管が存在しないから栄養されないのだとしたら,じゃあ関節にいる滑膜細胞とか炎症細胞はどっから湧いてきたんだ?ってことになる.そもそも,この論理が正しいとしたら,飲み薬の一般用医薬品だけじゃなく,医療用の注射剤も意味が無いということになる.

このWikipediaの論理は,ちょっと勉強した学生が「コラーゲンとかコンドロイチンとか,食べても吸収される前にバラバラに分解されちゃうから,意味ないのにねー」ってドヤ顔で言うのに似ている(自分も時々言ったりするけど…).でも,これは必ずしも正しくない.例えば,貧血の人にレバーを食べろって言うように,合理的な場合もあるし(この場合,レバーに含まれるヘム鉄が普通の鉄分より吸収されやすいという合理性がある),そもそも,食べたものがそのまま材料にならない場合だってある.例えば,最近アメリカで話題になっているのが,砂糖はインスリン分泌を刺激して,肥満どころか癌化も促進するっていう話だ.本当かどうかは知らないけど,糖だってアミノ酸だって,細胞のシグナル因子としての役割はあるので,グルコサミンにだってそういう役割がないとも限らない.

結局効くのか効かないのか…私の個人的な意見を言えば,例えばコンドロイチンの効き目はよく分かんないってのが正しいんじゃないかってこと.効くよ!っていう論文も,あれば効かないよ!!っていう論文もあるので.

私としては,飲んでみてイイ感じだと思ったのなら飲めばいいんじゃない?っていう程度のもんだと思う.要するに満足できるならそれでいい.気持ちの問題.別に攻撃力ばつ牛ン,っていうものではないし,往々にして値段も高いので,敢えて飲んだ方がいいってものでは全くない(ちなみに念のため…最初に述べた講義の弁解をしておくと,同じことは先生もおっしゃっていたことです.患者さんが無理せず,満足できるのであれば,とりあえずは試してみればいいと).

以下は全くの創造になるんだけど…グルコサミンとかビタミンとかってもう何十年も前に研究されていた領域なわけだよね.医薬品としての根拠はそうしたデータに基づいているんだろうけど,そのころの研究って,今から考えればすっごく雑なものっていうのも多い.かといって今,改めてそういう研究している人がいるかって言うと,ほとんどいないわけ(ウケない研究って予算がおりないから…).だから,なんとなーく効くかも?っていうなんとなーく一般常識?みたいなものが,ダラダラと引き継がれているのが現状なんじゃないかと.で,製薬メーカーや健康食品メーカーは,バカに売れるし,別にやめる理由もないからそのまま売り続けるっていう…

こういう現状はどうなのかと思うけど,少なくとも今,誰もができることは,少しでも多くの正しい情報(厳密には“正しそうな”としか言えないわけだけど)を集めるということだ.ネットがここまで広がった現代,手に入る情報の多くは,広告だったり,どっかの誰かのつぶやきだったり,はっきり言ってクソの山だ.その中から良質な情報源を探し出すことは,薬や健康食品に限らず大切なことだと思う.

さっきなんとなく良さげだな,って思ったのは国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報っていうサイト,ここは,それぞれの成分についておおまかなまとめを書いてくれている上に,きちんと参考文献へのリンクもはっている(←出所が明らかであるということは大切!).ここによれば,例えばコンドロイチンの変形性関節症(加齢性の関節痛)に対する効果は賛否両論,グルコサミンは骨関節炎に対して有効性がちょっとあるかも?程度,ビタミンCは摂りすぎない分には「風邪の症状の期間を1~1.5日ほど短くする」かも?的な感じだそうで.

医者は往々にしてサプリ嫌いで,患者さんが「◯◯を摂ろうと思うんですケド…」って相談しても「意味ないですよ!!」で一蹴してしまうことが多い.でも,そうした藁をもつかみたい気持ちを汲み取れない医者なんて,サイテー以外のなんでもない.そもそも,医療関係者は自分が使ってる医薬品以外について往々にして全く無知であるし,「意味がない」というのは科学的にも間違っているだろう(基本的に,科学は「存在する」ことを議論する学問なので,「絶対に存在しない」ことを証明するのは無理がある).だから,メリットとデメリットそれぞれについて,きちんと分かっている知見を集めて,患者さんに誠実に向かい合うくらいの努力はしなきゃいけないだろうとおもうよ…実際には時間的にも難しいんだけどね.

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