「世界がもっと根元の方でみしみしと悪くなっていく」

近頃、思っていることなのです。先日、外国人記者クラブの前で宮崎駿さんが喋ったことは。

フィルムがなくなって、私たちが使っていたセルもなくなって、絵の具で塗ることもなくなりました。それから背景を描く時にはポスターカラーを使っていましたが、ポスターカラーすら、もう生産は終わるだろうと言われています。筆も、良い筆が手に入りません。それから、紙がこの1、2年で急速に悪くなりました。私はイギリスの「BBケント」というケント紙を、ペンで描くときは愛用していました。とても素晴らしい、僕にとっては宝者のような紙が、すっと線を引くと、インクが滲むようになりました。インクが使えなくなりました。

何か、世界がもっと根元の方でみしみしと悪くなっていくようです。ですから、アニメーションのことだけ論じてもしょうがないんじゃないかなと思います。

ずっと飲んでいたあの紅茶やら、好きだったあのお菓子やら(食い物ばっかだな)、いつしか美味しくなくなったのは、慣れてしまったか、はたまた年かと思っていたのだけれど、どうもやっぱりちがうのかも。

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